恋のお試し期間



「じゃ。じゃあ映画を」
「ほとんど終わっちゃってるけど。どうする?最初からまた観る?」
「こ、これはまた家で観ます。えと。もう一つあってそれがまた面白そうで」
「今からだともう遅くなっちゃうしさ、それは明日観ることにして。…風呂行こ?」
「あ。そ、そっか。もうそんな時間か。私」
「帰るなんて言わないよね?だって君は明日も休みなんだしさ」
「もちろんです。お泊りセットバッチリもってきましたから」

そして念の為に下着は上下セット。ムダ毛も処理済み。完璧である。
気をつけないとそんな事さえ出来てない自分の女子力のなさ。

「そっか。よかった。じゃあ行こっか。いい、よね?」
「ふふ。お風呂に浸かったら顔がふやけちゃいますね」
「ん?……ああ。里真ちゃんはケーキだからね」

ちょっと甘えてみようと座った状態で先に立ち上がった佐伯に手を伸ばすと
優しい笑みと共に手を引かれ抱き寄せられる。
そして柔らかく彼の大きな手で頬を撫でられて、またしてもキスがきた。

「お風呂の前に慶吾さんにいっぱいキスされてとけそう」
「顔だけじゃなくて全身にキスしたら君の体蕩けちゃうかな」
「…あ。今すごいえっちなこと考えてる」
「分かる?」

そう言って意地悪っぽく笑ってまたおでこにキス。

「…私をふやかしてどうするつもりですか?魚の餌にでもします?それともハンバーグのつなぎ?」
「ははは。…どうしようかな」

握っていた里真の手を唇へ近づけ今度は手のひらにキス。

「…ま、まだお風呂入ってないから。それ以上はだめ」

今でも十分体が熱く妙にソワソワしているのに。それ以上されるともっと困る。
甘いスキンシップになれてない心臓のためにも。
里真は少し距離をおいて風呂の準備をする。お湯をためている間に体を洗って。
そんなたっぷりいれなくても2人で入ればあふれるだろう。

「どうしたの?そんな隅っこで脱がなくてもいいのに」

ぼんやり考えながら服を脱ぐ。すみでこっそり。

「慶吾さんが大胆に脱ぎすぎるんです」
「え。そ、そう?ごめん。里真だしいいかなって思って。
そっか、不快にさせてごめん。次からは俺も隅で脱ぐね」
「い。いえ。いい目の保養…じゃない。あの、先に入っててください」

彼が先に風呂場に入るとそそくさと自分も脱ぐ。
何かやらかしてないか不安すぎて。
なにもないことを確認してから彼に続いて自分も入る。
そこにはすでにシャワー中のセクシーな後ろ姿。

「どうしたの里真ちゃん?」
「……なんとなく」

ぴとっとその背中にくっついてみる。硬くてしっかりした男の背中。

「泡ついちゃうよ」
「…慶吾さんが洗ってくれるから大丈夫」
「いいけど。俺に任せたらちょっとえっちな事になるかもしれないけど、いい?」
「どうせすぐえっちな事になるんだから。いいです」
「はは、それもそうだ」
「それとも私が。あ。一緒に洗い合いあいます?」
「いいよ。じゃあやろう」
「嬉しそうな顔」
「嬉しいからね。…いっぱい触って、お互いの好きな所探そうか」
「そ、そういう趣旨?」
「そうだよ?…さ。里真。向い合って座ろうね。君は椅子に座って。…もちろん、足を開いて。ね?」
「あ。これ。だめなやつだ」

私は人間。ケーキじゃない。それは当たり前なんだけど。
その日のお風呂は体の芯まで柔らかくほぐされてふやけ蕩けてしまって。
彼にとって私は本当に甘いケーキなのかもしれない。なんて思ったりした。


【終わり】
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