恋のお試し期間


見た目は理想の釣り合ったカップルを見送り、1人適当に時間を潰して。

時間を見計らい忙しいランチ終了後の怖いくらい静まり返ったお店へ。
クローズドの看板が出ていたがカギは開いていた。
玄関を開けて中へ入るとせっせと片付けをしているバイト君たちと佐伯。
邪魔をしちゃわるいかとしばし傍観していた里真に気づいた彼が
先に車に乗っていてとカギを渡してくれる。

言われた通りに駐車場へ行き待つ里真。


「ツアーは楽しかった?どんな事したの?」

暫くして着替えを済ませた佐伯が出てきて車に乗り込む。
忘れないうちにとお土産を渡してあとはツアーの話し。

「メインが食べ放題と温泉なので。他は名所めぐりとお買い物です」
「楽しそうでなにより。お土産もありがとう」
「いえ」

同僚たちと写真を撮っていたら外国人客がきて皆英語が出来ず慌てた話し。
食べ放題でがんばりすぎて帰りのバスの中でうなされていた同僚の話しなど。
笑いながら話す里真に佐伯もつられるように笑ってくれていた。

こんな彼に裏なんてあるわけない。怖い部分なんて。

何時ものように矢田に意地悪をされたのだろう。きっとそう。

「今日は予約もないし夜からはもう休みにして2人きりで過ごさない?」
「はい」
「甘いコト、したいし」
「そ、それは」
「冗談。じゃあ夕飯の買い物して俺の部屋行こうか」
「……慶吾さんの部屋」

行き成り彼の部屋なんて緊張する。前回とちがって何も準備してないのに。
不安な気持ちがつい顔に出てしまったようで苦笑する佐伯。

「嫌ならやめる。何処がいい?」
「いえ。いいんです。…えっと。夕飯のお買い物でしたね」
「うん。先に買ってしまったほうがいいかなって思ってさ」

先にってどういう意味だろう。もう外へ出る予定はないってこと?

それってつまり?部屋で……?

ちょっと怖いようなワクワクするような。そんな気持ちを抱えたまま
近所のスーパーに入り夕飯の買い物。里真のリクエストにこたえてくれるようで
何がいい?と言われたので遠慮無く好物を言う。絶対美味しい。

彼氏が料理人だとこういう時にいいなあと実感する時だ。





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