恋のお試し期間



「なぁんだ。奥手そうに見えて案外やるのねあの人」
「……」
「それにしてもまさか彼女たちがここでデートしてるなんて思わなかった」
「……、そうだな」

テニスをするという里真たちを他所に此方はゴルフに来た美穂子と矢田。
準備をしながらさりげなく里真たちの様子を伺う美穂子。
仲良さそうに寄り添ってコートへ向かう二人は友達というよりもうカップル。

「どっちが気になってるの?」
「は?」
「彼女?それともあのオーナーさん?あの2人がいると貴方不機嫌になる」

クスクスと笑いながら気にしないそぶりを見せる彼に尋ねる。
何時も通り優しいけれど顔は不機嫌でマユをひそめている彼氏。
取り繕えばいいのにそう言う所がまだ隠せない素直な男なのだ。

「休日までアイツ等の顔を見たくないだけだ。鬱陶しい。ほらさっさと行くぞ」
「誠人は優しい人だもの。何か理由があるんでしょう?」
「無いよ」
「そうかしら」
「置いていくぞ」
「待ってよ」



まさかここで鉢合わせると思ってなかったのは里真も同じ。
ずっと緊張していたのが弾けてしまって注意力も散漫で。
せっかく意を決して彼とお泊りをするつもりだったのに。

いやでも別に彼らが夜まで一緒とは限らない。

ひとしきり遊んで夕方には帰るかもしれない。

「里真」
「あ。はい。ごめんなさい」
「…そんなに彼が気になる?」
「そういうわけじゃなくて。ただ、偶然ってすごいなって思って」
「そうだね。俺もそう思うよ。せっかく君と楽しく過ごしたかったのに」
「これからですよ。ね。教えてください慶吾さん」
「じゃあ、…もっとこっちにきて」

やたら意識する里真にちょっと不満そうな佐伯。
最初はギクシャクした2人も時間を経てなんとか何時も通りに。

「慶吾さん」
「なに?」
「そーんなに女子大生のみじかーいスカートがお好きですか?」
「え。何で?俺見てた?」
「見てた」
「ごめん。いや、彼女たちというか。ああいう恰好を里真にして欲しかったなって」
「あっやしー」
「里真」
「…冗談です。……だから、ね。こんな所で抱きしめないで」

いや、何時もより仲よくしているかもしれない。



だけど

「せっかくなんだし夕飯は4人で一緒に食べましょ」

なんて美穂子が言うものだからまた空気がおかしな方向へ。
誰の返事も聞かず彼女はテキパキと隣接するホテルのレストランを予約してしまい、
もとよりそのホテルで休憩をする予定だった里真たちはその流れのままになって。


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