恋のお試し期間



「じゃあ明日からも仕事頑張って」
「はい」
「君が今仕事が楽しいのならそれを優先してくれて構わないから。
気にはしてほしいけど、でも、里真の邪魔はしないからね」
「そんな邪魔だなんて」
「俺を少しでも好きって思ってくれるのなら。それで十分だよ」
「慶吾さん」

最後に軽くキスをして車から降りる。

仕事への意欲をもてた事はよかったけれど、少し寂しそうな彼も気になる。
どっちにも未練がましく結局どっちつかずのまま部屋に戻りネックレスを眺める。
まさか本当に筒抜けになるなんて事は無いだろう。

けどチェックしてしまったのは内緒。

「おい強引に入ってくるな」
「あんたが部屋に鍵なんかかけるからじゃない」
「そっちが俺の部屋押し入るからだろ」

風呂上り何気なく弟の部屋に入ろうとしたら鍵がかかっていたので
思いっきりドンドンドンドンドアを叩き続けたら根負けして開けてくれた。
自分の部屋に比べかなり整理されているのは母親の介入ではない。
姉弟でどうしてこうも違うのかと毎回不思議になる。

「あんたさ。昔、倉田先生の所行ってたよね」
「何とかは風邪引かないの誰かさんと違って俺は普通に病気にかかってたからな」
「一言多い」
「殴るな。…で?先生がどうかしたの?どっか悪いなら移すなよ学校あるのに」
「いやさ。なんとなく聞いてみただけなんだけど」
「最近やたら昔の事聞いてくるよな。何かあったの?」
「そういう訳じゃ…ないんだけど、さ」

もうどうでもいいはずなのに。何となく胸につっかえるもの。

「思い出そうとしたって無理なんじゃない」
「え?」
「姉貴が気づいて無い事いっぱいあるよ」
「どういう意味?」
「その方が、きっと幸せだと思うよ。…皆、そう思ってる」
「ねえ。裕樹どういう意味なのそれ。分かるように言いなさいよ」
「サボテン引き取ってやったんだもういいだろ出てけ」
「そ、それとこれとは」
「いいから出てけ!サボテン投げるぞ!」
「怖っ…なによもう。いいわよアホ裕樹!彼女にチクってやる!」

行き成り怒り出した弟に追い出される形で部屋を出る。
何時もと同じようなパターンだけど今回はまた違うような。
疑問に思いながらも部屋に戻りベッドに寝転んだ。
そしてそのまま眠ってしまったようで気づいたら朝だった。



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