龍神のとりこ
胸にぴったり抱きしめられたままで、早鐘を打つような心臓をトーコは何とか抑えていた。

どんな獣が近づいているのかわからないが、
トーコにはこうして抱きしめられている状況が危険な気がした。

ちらっと目を上げるとコハクの男らしく太い喉がすぐそこにある。

ごくり、とコハクの喉がなった。

トーコの身体がびくりとなった。

形のいいくちびるが薄く開く。
「、、去ったか、、」

吐き出された息がトーコの耳をくすぐった。



「どうした?あ、悪い、力が強すぎたか?」
赤らんだ顔を見てコハクは抱きしめた腕を緩めた。
「もういいぞ。」

違う理由で赤くなっていたのだが、、
それは口にはしなかった。

ほっと胸を撫で下ろし、コハクから一歩離れた。
「何がいたの?」


コハクは空を見上げている。
大樹の影から見える空は小さかった。
だがそこから出ようとはしない。
ひょこっと出ようとするトーコの腕も掴まれた。

「念のため、あまり離れるな。」
またコハクの胸に近くなる。


どうしたんだろ、あたし、
抱きしめられておかしくなっちゃったのかなーーー。。。


どきまぎするのをごまかすように、同じ方向を見つめる。


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