龍神のとりこ
トーコの頬にすーっと涙の筋が見えた。

「知らなかったんだ。トーコとのくちづけから龍神の気が戻ってくるなんて。
巫女と龍神の間でしかできないはずのことだから。トーコは巫女じゃないから。」

トーコを胸にしっかと抱き、彼女の頬についた涙を
コハクの指が拭った。

トーコの大きな瞳がじっとコハクを見ている。

「嘘じゃない。だから、もうくちびるにはしない。」


トーコの額に、耳に、布でぐるぐる巻きの肩らしいところに、

コハクがゆっくりとくちびるを押し当てていく。


「トーコを喰おうとしてたわけじゃない。」



だから、、

くちびるにはしないってこと?




鼻の奥がつんとしてくるようだった。


「リスみたいって、言ったじゃない。。」


「ああ、リスみたいだ。」

コハクの微笑みが月光を背に美しかった。


またひとつ、額にくちびるが降ってくる。



温かさを感じる。





ぶわっと涙が溢れてきた。



いつの間に、コハクといることがこんなに心地よくなってたんだろう、、




長い睫が濡れている。

瞼にも温かいくちびるがそおっと触れた。



「可愛いリスだから、喰わない。」

そおっと抱きしめる腕に力を込めた。



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