男装少女争・奪・戦 ~男子校とか無理だから!!~ 【完】

御子柴

「お前、あいつが御子柴だって知ってたのか?」

「はぁ? そりゃあ自己紹介されたし……」

「……俺の言い方が悪かった。
あいつの家が『御子柴』だというのは知っていたか?」

「家族なら全員御子柴でしょ?」

違うの?

「全く知らねぇみたいだな」

戸籍上そうなんない?

一般的に。

なるよね

「『御子柴』ってのは超がつくほど名門の家柄だ」

「祐一郎の家だって伯爵家だったんでしょ?」

同じじゃん。

「全然違ぇ」

「どこが?」

「ああいう家はプライドが高ぇんだよ」

「祐一郎のおじいちゃんもプライドなら高いよ?」

この前も祐一郎ん家を『ボッロい家ー』っつった悪ガキが怒鳴られてたし

あ、念のため

祐一郎ん家、古いけど結構手入れ行き届いてて綺麗だから

ボロ家ってよりも……うーん

……the洋館って感じ

「お前一度黙ってろ。
話が進まねぇ」

むむっ

「……」

「『御子柴』は家柄がいいって言ったろ」

俺は無言で頷く。

「そういう家柄がいいところってのはいわゆる御家騒動ってのが起こるんだ」

御家騒動って怖ッ

「誰がこの家を継ぐだなんだっていうそんなドロドロした争いにはその家だけじゃなく、親しい人間にも及ぶ」

つまり

「俺をその争いに巻き込ませないためにまず俺にその話をして、んで関わるなって言いたいのか?」

「まあそういうことだ」

ふうん

「ヤダね。もう友達になっちゃったし」

「は? 沙耶香お前何言ってんだ?」

「だーかーら
関わるなとかムリって言ってんの。
そんなの俺の問題だろ。何で祐一郎が口出ししてくんの?」

黙ってろって言われたことに怒ってる俺

でも俺はそれ以上に心から離れたくないっつう気持ちがあって

祐一郎が言ったことはもちろん無理

「……心配だからだよ」

予想外の言葉に驚きつつお礼

なんとなくうれしいかな、なんて

「……ありがとう……けど、さ」

それでもやっぱり俺の答えは変わらない

「……俺はただ心と友達だってだけだから心配なんていらない。
あ、やばい
急いでもどんなきゃ、デザートとか片付けられちゃう。
じゃな、祐一郎。またあとで」

「沙耶香! ちょっと待てよ!」

「ごめーん
夜続き話そう。な」

俺はそう言い残し再び食堂に向かった。




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