蝉鳴く季節に…
「そうだよな…走れるよな。ありがとな、水谷」








杉山くんの瞳、キラキラした瞳。

そのビー玉みたいな瞳が長い睫毛の奥で、少し潤んだ様に揺れていた。



まるで、月光を吸い込んだ夜の深い海みたいな………。








綺麗だって思うのは、不謹慎だったかもしれないね?












だからかな?
私は、何も言えなかった。



言葉が浮かばなかったんだ。







……ううん、ホントは浮かんでいたんだ。













“泣いてるの?“


“泣かないで?”












……………言えない。





言えなかったんだよ、杉山くん。










それを言わなかった事に関しては、今も後悔はしていないんだ。





だって……言ったらきっと、あなたは本当に泣いてしまったに違いない。



強がる事、それも杉山くん……あなたのプライドだったんだよね?









その時の私には、そのプライドを崩させてあげる力が無かったから、受け止めるだけの力が無かったから。







後悔はしていないんだよ?







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