意地悪上司の笑顔の裏は。
そんな私の騒がしい心境を知ってか知らずか、畳み掛けてくる。

「曽根川さんて、今フリー?」
「ふ、ふりーって?」
「彼氏いないの?ってこと」

ああ、〝フリー〟ね、ハイハイ。
モテモテな人生とは程遠いから、そんな単語使ったことが無い。その表現だとこっちは年がら年中フリーなんですが。

「え、えーと…」

そしてなんで、山上係長はこんなに私の近くに来たの。メガネのフレームが、蛍光灯を反射してキラリと光った。

「俺としてはいない方が有り難いけどな」

後ずさった私の腕がぶつかって、机に積んでいた書類が音を立てて床に散らばった。
山上係長の手のひらが、ゆっくり私の頬に触れる。

< 11 / 17 >

この作品をシェア

pagetop