年下くんの電撃求愛

……そうだ。そうだった。

少し前から、わたしは鷹野くんに、下の名前で呼んでくれと言われているのだ。

けれど今さら呼び方を変えるのは、無性に恥ずかしいものがあって、わたしはいまだに、つかさ、と呼べずにいる。


「べ……べつに良くない?」

「良くない」

「だって恥ずかしくない!?」

「恥ずかしくない」


スーツをかけ終えた鷹野くんが、ふう、と息をついて、ベッドの近くにやってくる。

そのまますとん、とベッド脇にしゃがみ、少し意地の悪い笑みを浮かべて、わたしを見下ろした。


「呼んでよ」

「……やだ」

「お願い」

「……い、いやです」

「ふ……頑なだなぁ」


嫌を繰り返していたら、苦笑した鷹野くんに、くしゃりと頭をなでられた。

続けて、指で毛先をもて遊ばれる。

今のわたしの髪型は、もう昔のような放置ロングヘアーではない。

自然な内巻きのボブ。付き合って半年経ったころ、鷹野くんに切ってもらったのだ。

ボブなんて絶対に似合わないと思っていたけれど、してみると意外や意外、コケシにならずに逆に垢抜けた。

それからはずっと、この髪型。贅沢なことに月1回、鷹野くんは、わたしの専属美容師を務めてくれている。

鷹野くんのハサミさばきって、迷いがなくて綺麗なんだよなぁ……と思い起こしていると、ふと、髪を遊んでいた指先が止まった。

そして、顔に影が差したかと思うと、いつの間にやら、鷹野くんがわたしの上に、覆いかぶさっていた。

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