年下くんの電撃求愛
なぜ。どうして。なにゆえに。いかに。
一晩中目をギンギンにかっぴらいて考えたけれど、もともと恋愛偏差値が低いわたしだ。そんな難解な問いに、答えを見い出せるはずもない。
そして、絶賛混乱したまま迎えてしまった、家を出なければならない時間。
わたしは結局、一番無難だと思われる回答を、無理やり自分に言い聞かせることにした。
……からかわれただけ。
そう。あれは、あのキスは、ただ単に、からかわれただけなのだ。
うるさい説教を聞きたくなかったから、物理的に口をふさいだ!!それだけのこと……!!
「おはようございます、本河さん」
「〜おひゃよう……っ!!」
そう強く念じたにもかかわらず、支店に出勤した直後。
スタッフルームで鷹野くんにあいさつされて、わたしは思いっきり噛んだうえ、声を裏返してしまった。
瞬時にこみ上げた羞恥に死にかけていると、追い打ちをかけるように、ななめ後方からくすくすと、笑い声が響いてきた。
「……ぷぷ、おひゃよう!だってぇ。ウケるんですけどー」
……うん、聞こえてるよ、前山さん。
片桐さんにこそっと耳打ちしてるつもりかもしれないけど、わたしの耳までばっちり届いてるよその会話……!!
時刻は午前8時半。まだ朝礼も始まっていないというのに、すでに精神力を使い果たしてしまった。どうしよう。今日一日、乗りきれる気がしない。
ぎくしゃく、右手と右足を同時に出す歩き方で、なんとか到着した自分のデスク。
デスクチェアーに腰を下ろすなり頭を抱え、わたしは自身に、必死で暗示をかけ直した。
……からかわれただけ。
からかわれただけからかわれただけからかわれただけ。
むしろいっそ、あれは夢……!!