年下くんの電撃求愛
その暗示がうっかり解けてしまわぬよう、その日中、わたしは徹底して、鷹野くんを避けることに努めた。
まず、個室での顧客カウンセリング以外の時間は、スタッフルームに行かず、倉庫で作業。
昼休憩は、わざわざ外にラーメンを食べに出かけた。
廊下ですれ違うときには競歩のスピードで歩いたり、ものすごく忙しい風を装ってみたりと、とにかく声をかけられないよう、ありとあらゆる方法で、機会を回避しまくった。
けれど、こちらが避けようとも、向こうが接触する気なら意味がないのだ。
「本河さん、今お時間よろしいですか?」
「………」
定時をすぎた、午後6時前。
いっこくも早く帰ろうと、自分のデスクにて高速でキーボードを打ち鳴らしているところに、後光をまといながら、鷹野くんがやってきた。
あ、全然お時間よろしくないです……!!
「担当移行予定のお客様の、情報をいただきたいんですが」
「あ……うん……」
心ではそう叫んだけれど、仕事のこととなると、取り合わないわけにはいかない。
それに、この時間帯のスタッフルームには、ほかの社員もたくさんいるわけで。
昨日みたいに、からかいでキスをお見舞いされるようなことは、まずないはずだと、わたしは自分を落ちつかせる。
「あー……えーっと、咲本さん、だよね?」
なんとか平静をよそおって答える。
鷹野くんは、「お願いします」と頭を下げると、隣のデスクチェアーに腰掛けた。
目線が同じ位置になったことに、さらに心臓を痛めながら、わたしは、顧客情報を口にする。