年下くんの電撃求愛
そんな痛い人間になってしまって、数日が経った。
「本河ぁ!!」
野太い声に呼ばれて、はっと顔を上げる。
週明けの出勤日。早めに到着し、デスクでぼんやりしていたわたしを大声で呼びつけたのは、大貫支店長だった。
今年で52歳になる支店長は、色黒で猿顔、という暑苦しい容姿をしており、性格は、ザ・昭和の男。
好きなものは酒と女と金、という暴君だけれど、持ち前の押しの強さで勝ち取る契約数はピカイチ。優秀な成績の持ち主だ。
な、なにか粗相をしでかしてしまったでしょうかわたし……。
怒鳴るように名前を呼ばれたので、肩をすくめながら、窓際のデスクに足を運ぶ。
「明日、俺出張入ったから」
そんなわたしに、支店長は、太い眉毛を動かしながら、肩透かしな報告をしてきた。
「……はあ、出張ですか」
「おう。だから実質、明日の責任者はお前な」
突然そんな命を受けて、わたしはワンテンポ置いたあと、「えええっ!?」と驚きの声を上げた。
「え、なんでですか!?主任は!?」
「主任もVIP対応で店外。必然的に、お前がトップになるってわけ。新人たちのフォローよろしくな。まあ、新人たちも慣れてきたころだし、大丈夫だろ」
「い……」
……いやいやいや。とてつもなく嫌な予感しかしませんけど。
心のなかではそう訴えるものの、口ごたえしたところで「ああん?」とメンチをきられるのがオチだ。
半ば放心しながら「頑張ります……」と一礼し、わたしはとぼとぼ、自分のデスクに戻る。