年下くんの電撃求愛
「はあ……」
座ったとたん、こぼれてしまうため息。
けれどそれは、思わぬ大役を任されてしまったプレッシャーからくるものだけでは、なくて。
『新人たちのフォローよろしくな』
支店長の発した、“ 新人 ”という語に、即座に鷹野くんを連想してしまった自分に、気づいたからだ。
倉庫で意味深なことを言い残された一件から、数日。
あれ以来、鷹野くんからはなにも、アクションはない。
これ以上心を乱されずにすんで、それはとてもありがたいことなのだけれど……なにもなかったようにふるまわれると、逆にやきもきしてしまうというか。
鷹野くんが言っていたこともわからないままだし、よけいに、意識してしまうといいますか。
『……可愛いですよ、あなたは』
「……っ、」
最近頻回に出現する痛い妄想が、ふいに頭をよぎった。
わたしはあわてて首を左右に振り、座ったばかりのデスクチェアーから立ち上がる。
ああもう、顔でも洗ってさっぱりしてこよう。顔を洗うどころか、いっそ滝にでも打たれて、頭から冷やしたほうがいいのかもしれない。
火照ったほおに手を当てながら、早足でスタッフルームの出口へと向かう。
ところがドアノブをひねり、廊下へと踏み出したところで……
「あ……」
……ちょうど出勤してきた鷹野くんと、ばったり、顔を合わせてしまった。
な、なんつータイミングだ……。
ごくりと息をのみ、わたしはとっさに目線をそらす。
「おはようございます」
聞こえてきたのは、温度のない冷静な声だった。
最低限のあいさつだけ行った鷹野くんは、あっさりわたしとすれちがうと、スタッフルーム内へ入っていってしまった。