年下くんの電撃求愛

『……その前のことは、まったく覚えてないんですか?』


職場の倉庫で、キスをしたとき。鷹野くんは、たしか、わたしにそう尋ねた。

まるで以前にもくちびるを重ねたかのような言い方に、そのときは一体何を言うのかと思ったけれど……支店長の口から自身の黒歴史を聞いてしまった今、わたしは1つの答えを見出していた。

わたしたちは、きっと、本当に、キスをしてしまっていたんだ。

わたしが酔っ払って、記憶をなくしたあの夜に。

背中にひやりとしたものを感じながら、わたしはぎゅっと、自身の膝を抱える。

いったいどこでどうなって、わたしたちはそんな展開になってしまったんだろう。

鷹野くんから、ということは、まずないと思う。

これから勤める職場の先輩、しかも酒臭いというオプション付きの女に手を出すほど、鷹野くんは飢えているわけがないし、見境ないはずがない。

消去法で考えるなら、わたし。わたしからということになる。

頭のなかに生まれた予想に、背中の寒気が強さを増し、わたしはぶるりと身をふるわせた。

もしかして……もしかしなくても。

わたしは人恋しさのあまり、若き鷹野くんに、無理やりキスをかましたんじゃないだろうか。

無理やりキスして、押し倒して、もしや、それ以上のことも……


「ああああ……」


ひたいを膝頭に強く押し付けて、わたしは深く、自己嫌悪におちいった。

信じたくない。でも、その可能性は否めない気がしてきた。

酔って記憶のないなか、後輩と一夜のアヤマチをおかしていたとしたら、本当に笑えない。処刑レベルだ。

切腹モノだ。腹を切るどころか、全身刻まれてピラニアのエサにでもなるべき罪業だ。

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