ブラックバカラをあなたへ
涼しい風が私たちを包み込む。




私は彼に、本当の気持ちを伝えた。




自分自身でも、気づいていた。




彼が誰よりも好きなことを。




けれど、女性嫌いな彼にとって、それは重荷にしかならないと思った。




だから、気付かないふりをした。




けれど、このまま、曖昧な関係のままずっと一緒にいるよりも、この気持ちを告げて別れた方が後悔しないと思った。




だから、最後にありがとうと伝えたかった。




恋とは、苦しくて、自分が分からなくなるけれど、小さなことで嬉しさを感じて、幸せになる、素敵なものだと教えてくれた。




私は廻さんに出会えて、とてもとても幸せだ。




そう思っていると、私の手に暖かいものが触れる。




それが、彼の手だと気づくのにそう時間はかからなかった。




なぜ、触れるの?




さっきまで、女性に触られそうになって、あんなに震えていたのに…




『…違う』




彼がぼそっと呟く。




『違うとは、何がでしょうか…?』




『お前は、恐くない…』




私はそれをどう受け止めていいか分からず、ただただ困惑する。




『初めて、お前を見た時、綺麗なやつだと思った。何故かお前だけは恐くなかった。だから、婚約も引き受けた』




綺麗…?私が?




嬉しいけれど、急に言われたものだから、戸惑いの方が大きい。




『お礼を言うのは俺の方だ。こんな無愛想なやつと一緒にいてくれて…ありがとう』




少し恥ずかしいのか、顔を逸らしてそう言う彼を、私は可愛いと思った。




『好きとか…そういうのは、まだ分からんが、その…これからも、一緒にいてほしい…』




私の手を握る彼の手が、強くなった気がした。




私は、きっと、別れを持ち出されるだろうと思っていたので、まさか、こんな展開になることを夢にも思っていなかった。




だから、あまりにも嬉しくて。




私は本当に幸せ者だと、そう思わずにはいられなかった。




私は彼の手をそっと握った。
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