俺と結婚しろよ!










小さな小部屋だった。

壁にはホワイトボード。

部屋の真ん中には少し大きなテーブルがあって。

その周りに椅子が置いてあった。

そして、窓からは、夕暮れの赤い光が差し込んでいた。

きっと、ミーティングなどに使う部屋なのだろう。

そんな部屋の奥側の椅子に、彼は座っていた。





肘をついて伏せるようにして、赤くなる窓の外を見ていたが……

扉のところに立つあたしを見て、驚いたように顔を上げた。





賢ちゃんだ。

……あたしの好きな、賢ちゃんだ。

その顔を見るだけで、涙が込み上げてきた。

もう、二度と近くで見られないだろうから。






賢ちゃんの笑顔が好きだった。

その、少しつり上がった瞳が細くなって、口元に少しだけ皺が寄って。

すごく面白そうに笑う。




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