俺と結婚しろよ!
「ありがとう、賢ちゃん」
あたしは、大好きな賢ちゃんに言う。
大丈夫、声は震えていない。
「そして……ごめんね」
「咲良」
賢ちゃんはあたしを呼んだ。
その声で呼ばれるだけで、まだ胸が甘く鳴る。
諦めないといけないのに。
忘れないといけないのに。
「なんで咲良が謝るんだ?」
賢ちゃんは無理に笑おうとするのに、すごく悲しそうで。
その無理な笑顔が、あたしの胸を痛めつける。
そんな賢ちゃんに、あたしは聞いていた。
「賢ちゃん、女遊びが激しいって本当?」
修也はご丁寧にリストを作って教えてくれた。
そして、優弥さんも否定しなかった。
だけど、心のどこかで、賢ちゃんが否定してくれるかと思ったんだ。
人生そんなにうまくいかないのに。