俺と結婚しろよ!
だけど……
「あたしも、大好きだった」
知ってしまったからには、なかったことには出来ない。
あたし、もしこのままよりを戻したら、ずっと考えるんだ。
あ、あの人、賢ちゃんが抱いた人だ。
賢ちゃん、他の女性を狙ってないかな、なんて。
「ごめん……」
あたしの声は震えていた。
そして、涙で顔はぐしゃぐしゃだった。
「ごめん……耐えられない」
賢ちゃんは肩を落として下を向いた。
筋肉質の賢ちゃんが、酷く小さく見えた。
駆け寄って抱きしめたい。
大好きだよと言いたい。
だけど……出来ないんだ。
この先のことを考えると、不安で仕方がない。
ありがとう、賢ちゃん。
短い間だけど、楽しかったし夢みたいだった。
さよなら、だね。
あたしは踵を返し、部屋の扉に手をかけた……