正義の味方に愛された魔女2

⑤ 俺の唯一

「おーい百合ー、戻って来い……。

あそこのショップの人もなぁ、まさかこんなレベルだとは思わないだろうな。


ということは、これはずっとしていてもらえるってことでいいよな?
じゃ、はい。お手をどうぞ、奥さん」


龍二は、まだ半分夢心地の私の左手をとって、薬指にそれを嵌めてくれた。


「では、私の愛しい旦那様、左手をお貸しください……」


《旦那様ね、旦那…百合の旦那かぁ…うんうん》



長くてゴッツイ指に、私とお揃いの指輪。

夫婦になったんだね……。

指輪の交換は、婚姻届を出して姓が変わる時と同じくらい、それを実感する行為だったんだね。

感無量……胸が一杯で、鼻の奥が痛くなってきた。
あぁ、ごめんね龍二、今度こそもうダメだ……。


指輪のはまった大きな手に、涙のしずくが一滴…二滴…。


すっかり慣れっこになった、すぐに抱き締める癖……。これまでで一番愛情に溢れて視える。


《愛してるよ……。
百合は俺の唯一なんだ。大切にするから…》

「……必ず帰るから、これを俺だと思ってしてろ。
いつも一緒に居るからな……。
こんな感じか?…妄想じゃなくて本当の約束だぞ?」


「……や…約束する……っ」


ずびずび鼻を啜りながら、龍二の胸に顔を埋めて泣いた。


「龍二、大好きだよ……愛してる」


龍二が言葉と心を丸ごと使って愛を語る時、
視えるのは…
優しくてふわふわしていて弾力がある大きな心の広がり。
触れている部分の全てを振るわせて響く
大好きな低音を聴きながら、
私はその中心に包まれる。


自分を心ごと私にさらけ出して預けてくれるこの人は、
私を丸ごと愛し理解して寄り添ってくれる。
私のことを唯一だと思ってくれている。
言葉にしなくても、自分達がツインソウルだと思っている龍二。
彼は自分が思っているより遥かにロマンチストなのだ。
言うと照れるから、今は言わないでおいてあげるね……。




これからも、私は龍二に守られながら、自分の力を、正しく優しく使って
愛すべき人々に囲まれて明るく楽しく生きていくのだと思う。


荒川百合。50歳。再婚して一番変わったことは、

いつも愛する人に愛されている、守られている、
という絶対的安心感が
心の中にある、ということ…かな?

………ね、龍二。





【完】
< 49 / 50 >

この作品をシェア

pagetop