甘いささやきは社長室で
そうこうするうちに、東京を出てから一時間半で到着した仙台。
そこで私と桐生社長は、荷物を駅前にある今日の宿泊先であるホテルに預け、休む間もなくバタバタと取引先へ向かった。
電車とバスを乗り継ぎ、まずやってきたのは無農薬野菜を生産している農家。
「お世話になっております、セントラルフーズの桐生と申します」
「真弓と申します」
「おー!どうも!いつもお世話になってますー!」
にこやかに迎えてくれた農家さんに挨拶をして、現場を見せてもらい……話をそこそこで切り上げる。
その足で次は食材を卸している飲食店をたずね、また挨拶をして……と夜まで繰り返すこと数軒。
「おつかれさまー!かんぱーい!」
「……お疲れさまでした……」
すべての取引先回りを終えたその夜。
やってきたホテル近くの居酒屋で、明るくグラスを持ち上げる桐生社長に、私はぐったりとした顔でグラスを合わせた。
つ、疲れた……!
歩き続け、乗り物に乗り続け、仕事をして。ひたすらその繰り返しだったものだから、足も腰も疲労で限界。
疲れ切った私の一方で、桐生社長は相変わらずのへらへらとした笑顔でグラスの中のお酒をひと口飲んでいる。
私以上に相手と話して笑って……それでもまだ元気だなんて。タフな人だ。