甘いささやきは社長室で



そんな自分だったから、父から『会社のために彼女と結婚してほしい』と婚約者を紹介された時も、特に抵抗なく受け入れられた。



誰といてもこの心は変わらない。

それならいっそ、仕事として割り切ればそれなりに上手くいくだろう。そう思って、花音とも会うようになった。



そんなある時、仕事中偶然目に入ったのは、彼女のクールな横顔。



『お疲れさまです。これ、総務から秘書課あての書類です』



通りがかった秘書課のフロアにいた彼女は、笑顔ひとつなくほかの社員と会話を交わしていた。



……美人。だけど冷たそう。

それが正直な第一印象。



『ねぇねぇ、あの子誰?あのクールそうな美人』

『え?あぁ、総務課の真弓さんですか?たしか氷の女王とか呼ばれてるんですよね、ピッタリって感じ』



当時の秘書の言葉に知った、『総務課の真弓さん』と『氷の女王』というあだ名。

すごいあだ名だなぁ……けど、なんか分かるかも。

そう思った時から、これまで特別気にしていなかった彼女の名前が、なにかと目に入るようになった。



< 153 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop