甘いささやきは社長室で
……ていうか、マユちゃん普通に喋ってるし、さっきも『尊』って呼んでたし。
元カレのほうが距離近く感じるんですけど。
そんな不満が顔に出てしまわぬように、また感情をぐっとこらえた。
ゴホン、とわざとらしい咳払いをひとつすると、椎葉社長は本題を思い出したかのように自分のスーツの胸ポケットを探る。
「自分自身のご挨拶も兼ねて、今度弊社で取引先の皆様や来賓をお招きして立食パーティーをおこなうので、そのご招待にまいりました」
「立食パーティー、ですか。それはそれは、楽しそうですね」
「当店を使ってのパーティーですので、そんなに大きなものではありませんが。よろしかったらおふたりでいらしてください」
ふたり、で……その言葉を言うと同時に、椎葉社長はマユちゃんににこりと微笑んだ。
「……ありがとうございます、ではスケジュールのほうを組んで、ぜひ参加させていただきますので」
『彼女の元カレの会社のパーティーに彼女を連れて行くなんて遠慮したい』、そんなおとなげない言葉を飲み込んでうなずくと、手渡された招待状を受け取る。