甘いささやきは社長室で
「桐生社長もいらっしゃっていたんですねぇ!見ましたよ、先日の雑誌!まるでモデルみたいでしたねぇ!」
「い、いえとんでもない……」
こちらの心の内など当然知らない社長は、あれこれと話を始めてしまう。
おまけに「ねぇねぇ、桐生社長がいらっしゃるわよ!」と他の会社の人まで呼び始めてしまい……そうこうしているうちに、あっという間に女性たちに囲まれてしまった。
「……桐生社長、私は邪魔にならないようにあちらにおりますので」
「え!?マユちゃん!?」
そんな空気から邪魔になってしまう、と考えたのだろう。彼女はそう小声で言うと、スーッと店内の片隅へと姿を消してしまう。
ま、待って……!
ひとりになろうものなら、椎葉社長はもちろん、他の男にも声をかけられかねない!
すぐにでも駆け寄って、『隣にいなよ』と引き止めたい。けれど仕事上の付き合いの人々を邪険に扱うことはできないし……。
そんな気持ちで愛想笑いを浮かべた僕に、周囲の人々はあれこれと話を続けた。