無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
 今から七年前、

 恋人となった木村――向こうはユキをどう思っていたかわからないが――から
 青木コーポレーションに就職しようかなと聞いた時に感じた違和感は、日を追うごとに明確な形を作りだしていった。


 青木家のお嬢さまの真優から

『ねーユキ、今日さ、
 学校帰りにほらあの木村って人だっけ、
 ユキのボーイフレンドに声かけられたよ』

 と聞くようになり、


 その後も頻繁に、真優から

『今日もまた会っちゃった』

 という報告を聞いた。



 一度だけなら偶然もあるだろう。

 でも二度三度と重なると偶然とはいえなくなってくる。


 ユキが木村に聞くと、『ああ、そうなんだ』と悪びれる様子もなかった。

 自分の知らないところで、木村が真優に近づいていると知った時の恐怖。

『どうしてお嬢さまに近づくの?』と聞いた時の木村の歪んだ笑顔。



『どうしてって…

 お近づきになりたいから?』


 爽やかに見えていた笑顔の奥で、
 木村の目が冷たく光っていることに気づかなかったことに、ユキは自分を恨んだ。



――苦い恋の想い出……


「もうね、男はいいの

 私は青木家に骨を埋めるんだから」
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