無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
 離れていく大石の背中を見送ると、

「ちょっとちょっと何なのあのイケメン!」

 陽菜乃がテーブルに身を乗り出すようにして食いついた。


「大石さん、花菱百貨店の外商の人
 やり手の営業マン」

「へー なるほどねー
 すっごい感じがいいもんね

 あれじゃ目の肥えたマダムもいちころだわぁ
 クスッ
 でも彼の連れの二人、ユキのことすごい目で睨んでた」


「アハハ やめてよ冗談でしょ」


「彼、大石さんだっけ、少し俳優の木村ショウに似てるね
 いや、大石さんの方が素敵かも?」


 陽菜乃から出た”木村”という言葉を聞いて、
 ユキの胸はズシンと重たくなり暗い影に包まれた。


 ユキがたった一度だけ本命のチョコレートをあげた相手……

 その元カレの名前が木村だったのだ。


 木村という苗字が同じだけなのに……

『気にしてないよ 大丈夫』なんて言ったのはウソ。

 もう七年も経っているのに今でも笑っては話せない。




「そうかなぁ……」

 重く暗い気分になったせいか、ユキは大石に誘われた話を陽菜乃に切り出せなかった。

 そしてなんとなく、大石に貰ったブローチを今日は付けて来なくて良かったと思ったりもした……。
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