無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 西園寺洸にも彼の両親にも、西園寺家に住んだらいいのにとずっと言われていた。

 実際泊まることも多く、沢山ある部屋のうちの一つは鈴木専用になっているが、それでも鈴木はこの部屋を解約するつもりはなかった。


 孤独な暮らしが気に入っているからだ。


 暗いままの部屋から外を見ると、この東京という街は孤独の集合体のように見える。

 一つひとつの灯は、寂しそうだと見ればそれだけであるが、

 孤独の中で皆何を思うと考えれば怖くなる。



 慢心鼻を弾かる、だ。

 この孤独な夜景はいつも自分にそれを教えてくれる。



 それでもいつの間にか、心に慢心は生まれていたのだろう……。


 
『アネモネさん、いい子ね

 真面目に一生懸命生きているんだろうなって感じる』

 蘭々がそう言ったことを思い出した。



――華やかな世界の片隅で、

 彼女は自分を見失わずに黙々と生きている。


 そんなことを思って、鈴木は大きく息を吐いた。
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