無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 一時間ほどして打ち合わせが終わり、常務が席を立った後、

カップを片づけようとした鈴木の手に、ほんの少し珈琲がついた。


 ハンカチを取ろうとしたふと手が止まり、

 珈琲メーカーの隣に置いてある使い捨てのおしぼりで手を拭いた。



 今日のハンカチは彼女がパントムに預けておいたあの時のハンカチである。

 珈琲の染みを作りたくはないと思った……。




―― 恋?


 常務、わたしは恋をすると同時に、失恋する性質なんです……と、自嘲めいた薄い笑みを浮かべた鈴木は、静かに溜め息をついた。


 昨日、彼女はパントムに行ったのだろうか。


 最後に送ったメールに返事はないが、パントムのBijouを指定した悪あがきを彼女はどう受け取ったのだろう……。
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