無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 こうして一人で歩いていると、芸能プロダクションや雑誌のカメラマンに声をかけられたりすることもあるが、

 本人はいたって冷静に今日はよほど人が少ないのだろうと気に留めることはない。

 秘書に飽きたら芸能界にいらっしゃいよと言う蘭々が、実は本気で言っているとは思ってもいなかった。



 彼の最大の魅力はその憂いを含んだような静かな目元にある。


 その目を普段は縁の厚めの眼鏡と長い睫毛が隠しているし、

 西園寺洸という華やかな人物の隣で目立たないことを信条としている控えめな動作ゆえに、

 彼の表面的な美しさに気づく人は稀だったのだろう。



「……」

 Bijouに、彼女が来る可能性はないに等しいと思っていた。

 それでもまんじりともせずに家を出たのは、夕焼けを見るためだと自分に言い訳をしたが、

ビルの谷間から見える空は狭い。


 よく見ると暗く厚い雲が夕焼けを遮るように西の空に広がっている。


 予報通り雪が降るのかもしれない。

 そう思いながらスマートフォンを空にかざす様にして写真を撮った。
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