無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 一方、ユキはメールを受け取り、唇を噛んでいた。


 迷いながらここまで来てしまったが、それでもまだ迷っていたのである。



 パントムに足を踏み入れた時、有名なファッションモデルLaLaが目に飛び込んできて思わず足を止めた。

 ロビーで立ち話をしていたLaLaは、雑誌からそのまま抜け出たように女性から見ても惚れ惚れするほど美しかったし、

 パントムのロビーはまるで時間が止まったかのように皆がLaLaを見ていた。



 コートのポケットの中でスマートフォンが小刻みに揺れ、

ここに来た目的を思い出したように慌ててユキはメールを開いた。



 それが場所の変更を告げる、宙からのメールだったのである。


 まだ迷いが消えたわけではないが、仮にその場に行ったとしても自分がアネモネだと宙にわかるはずはない。

 その場に行って、宙をこの目で見てから帰ってしまえばいいじゃないか。

 そう思いながらメールを打った。


『もし、仮に行ったとして、

 宙さんだとわかる目印は?  アネモネ』



 悩みながらメールをただ見つめている横を、

宙が足早に通り過ぎて行ったなどとは予想だにしなかった。

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