無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
――頼む、空いていてくれ
とにかくユキより先に店にいかなくてはと、鈴木が駆け込むように入ったバー『Ciel』のカウンターは、
幸いな事に空席が目だっていた。
……あぁ よかった
鈴木はホッとして最奥に座るとすぐさまメールを送った。
『目印はカウンターの最奥の席に座っている
白いセーターの男です 宙』
ユキはホテルカリーナに入るのは初めてだった。
それでもパントムからそれほど離れていないカリーナの場所はすぐにわかったし、バー『Ciel』の看板もなんなく見つけることができた。
なので宙こと鈴木からそれほど遅れることなく『Ciel』に到着したのだが、
店の扉の前に来ても相変わらず迷っていた……。
もし、宙が近寄りがたい雰囲気の人だった場合は、宙には声をかけずに適当に飲んで店を出るとして、
そもそもこの店は女性一人で入ることに違和感がないバーなのだろうか?
時々陽菜乃と飲みに行くことはあるが、ホテルのバーに入ったのはあの日『Bijou』が初めてのことだ。
他のバーがどうなのかなんて想像もできなかった。
スマートフォンを片手に持ったまま一歩が踏み出せずに思い悩んでいると、
ユキの脇をすり抜けて二人連れの男性が店内に入り、
その時、店の中がチラリと見えた。