無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
  ***



 ユキは昨日の午後、大石にチョコレートを渡していた。

 バレンタインには一日早かったけれど、ちょうど大石が青木夫人に届け物に来たのだ。

 渡したチョコレートは義理とわかるであろう既製品のものだった。


 なぜ義理チョコとわかるのかと言えば、

 時々一緒に来る大石の上司に一つを渡してほしいと言って、まったく同じ包みの物を二つ渡したのである。



 それがユキの返事だと大石はわかったのだろう。


 大石は少し寂しそうに唇を結んだが、次の瞬間にはすっきりとした笑顔でユキに礼を言った。

『ありがとうございます』



 ユキの胸はチクリと痛んだ。


 彼はユキを結婚相手として理想の人だと言ってくれたのだ。

 そんな風に言われた事でユキはうれしかっただけでなく、自信を持つことができたのだから……。



―― こちらこそ、本当にありがとうございました 大石さん

 ユキは心の中で謝った。
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