籠姫奇譚

珠喜はあげはの頬に触れながら、優しく微笑んだ。


「ごめんなさいね。長湯だったかしら……こんなに赤くなって」

「あ……違います。私……」


あげはは俯くと、なにやら口ごもった。大体、何を言いたいのかはわかる。


「あげは、わたくしが教えられるのは、ほんの先触れでしかないわ。後は……楼主様が、貴女を立派な華にしてくれる」

「楼主様が……?」

「そうよ。だからあげは、怖いことなんて、無いわ」


この廓のしきたり。

初売りの前夜に、楼主が新造の純血を奪う。


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