籠姫奇譚

ふらふらとした足取りで部屋へ戻ると、珠喜は狂ったように笑った。

その声は廓中に響き渡り、あげはの耳にも届いていた。


「どうして──どうしてよッ!!」


花瓶に生けられた花を抜き取ると床に叩きつける。

花は怨めしそうに珠喜を見上げていた。

珠喜はそのまま膝を折ると、床に泣き崩れた。

まるで目の前にあった僅かな光が消えてなくなるような感覚。

あまりに残酷な報せだった。どうしてこんなことになってしまったのか、珠喜に知る術はなかった。

身請けの話は断れない。
それが掟、籠姫の誇り。

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