瑠璃色の姫君




後ろでニシシ、とフリュイが笑っている。


ガレットがそれを見て鼻をピクリと動かした。


彼の名を呼ぶと、彼は僕を見た。



「店を出さなきゃならないのに旅なんて行けないだろう」


「……そうだけど、休業すればいいし」


「ガレットの店は冒険家や旅人が沢山来るんだろ。休業にしたら困る人いるんじゃないか?」


「……いるだろうな」


「だったら、お前は休業しないべきだ」


「……それはわかってるんだ」



自己嫌悪しているのか、うつむいたガレット。



「バベル」


「なんだ」


「俺、昨日も言ったけどバベルの剣術は立派なものだと思ってる」


「ああ」


「だけどな、よく考えると不安になっちゃったんだよ」



なんとなく、それは勘付いていた。


心配してくれて付いてくると言うのだろう、と。



「誘拐されたり、とかやめてくれよ」


「されないよ。そのために帽子まで用意してくれたんだろ?」


「ああ」


「髪が見えないように被るから安心してよ」



起きてすぐにフリュイから手渡された黒いニット帽をぐっと引っ張って頭を覆った。


それを見た彼は、渋々ながらも頷いて、それからかなり大きな布のかかったものを差し出した。



「なにこれ?」



布を引っぺがすと、そこには真っ白な頭に艶のある黒い体をした鷹、ルディがいた。



「なんで?」


「こいつをお前に預ける。ルディは敵を察知したり危険を知らせてくれる。上手いこと使ってやってくれ」


「いいのか?」


「ああ。手紙を届けたりも出来るからバベルとの連絡手段にもなるし、こいつを連れて行ってほしい」


「………」



ルディと目を合わせる。


僕に懐いている彼は「もう旅の準備は万端なんだけどまだ行かないの?」とでも言うように首を傾げた。




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