チェロ弾きの上司。
あたしがそう言うと、
真木さんは、視線は天井に向けたまま、
ふわっと、
笑った。

今までに見たことがない、柔らかな微笑み。

綺麗な人がそんな顔すると、花が咲いたよう。
思わず見とれてしまった。

「……望月」

「は、はい、何でしょう」

「いや、望月だなと思ってさ」

「はい?」

真木さんがこっちを向いた。
柔らかな眼差しに、不覚にもどきりとしてしまう。

「好きなものと、好きな感触」


……。

な。
ななな。

なにーっ‼︎⁉︎


真木さんが?
あたしを?


夢か、これ?

だって、ありえない。


真木さんは立ち上がり、うーん、と背伸びをしてる。

「そうだったのか。あースッキリした」


いや。
いやいやいや。

ひとりで納得してスッキリしないでいただきたい。

こちとら、頭の中大混乱ですけど⁉︎


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