チェロ弾きの上司。
入りまであと一小節……

三神さんの様子をうかがい、指揮者を見て……


よしっ、音程もタイミングもばっちりー!

早瀬先生がそっとオーケーサインを出してくれた。
ありがとうございます!

他の弦楽器がピアニッシモの中、三神さんとあたしのぴったり重なった高音が、ホールに響き渡る。


頭の中はひとつだけ。

精一杯の美しい音を出したい。



これをあと2回。



よっしゃー重責は果たした!
後は6小節、三神さんのソロを堪能するぞ!

……うわぁ。うわぁ。

エスプレッシーヴォ(感情をこめて)、すごすぎ……!

だって、明らかに、

好きだ、って、叫んでる。

好きだ、……って……

思わず真木さんを見てしまったら……、すごく優しい眼差しで、あたしを見てる。

その途端。

すとん。

とあたしの中で、何かが落ちたような感覚がした。

何、今の。

いやいや。最後の2小節、ピチカート残ってるから! 集中!




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