チェロ弾きの上司。
曲は進み。
第4曲終盤、チェロソロ2小節に導かれるように、ヴァイオリンソロが入る。
この後、あたしがソロのフラジオに加わる。
弦楽器の高い音をいきなり出すというのは、難しい。
実際に弾くまで、正しい音を押さえられているか、わからないんだもの。
(弾き始める前にちょいちょいと右手で弦をはじいて音程を確かめる裏技はあるけど、ヴァイオリンソロだけの静かな場所でそれはしにくい。)
でもここは絶対外せない。三神さんが作った世界を壊したくない。
隣でものすごい演奏がされてるのはわかるけど、味わうどころじゃない。
静かに楽器を構えて、手で覚えた形に薬指を伸ばす。
ここで大丈夫なはず……。
だけど……。
右手が震える。
左指は最悪三神さんの音程に一瞬で合わせればいいけど、弓の震えはどうにもならない。
フラジオは弓をしっかり弦につけないと、キレイに鳴らない。
どうしようどうしよう。
焦る中、ふと、視線を感じて、目をやると。
真木さんが、力強くあたしを見つめてくれてる。
“大丈夫”
って言ってくれてる気がして。
すっと震えがおさまった。
あれ、何だろう、これ。
ま、何でもいいや。ありがとうございます。