チェロ弾きの上司。

廊下まで見送りに出た。

「日焼けしてるけど、今も野球してるの?」

「草野球だけどね。みーちゃんは今も弾いてるの?」

あっくんはそう言って、ヴァイオリンを弾く真似をする。
慌てて止めた。
ガラス張りで、中から見えるから!

「弾いてるよ。ここの市民オーケストラ入ってる」

「そっかー。なんかうれしい。オレさ、小学生の頃、みーちゃんがバイオリン練習してるの聞きながら、素振りするの好きだった。オレも頑張ろうって思えてさ」

「あたしもだよ! あっくんが毎日練習してるの見て、あたしも頑張れたんだよ!」

お互い、笑い合って。
手を振って、またね、って別れて。

いやー、びっくりの再会だったなー。

なんて上機嫌でデスクに戻ると。

「望月、メールで送っておいたデータ、今日中に抽出しろ」

真木さんが怖い視線を突き刺してきた。

隣で佐倉さんが口に手をやった。
……明らかにニヤけている。

「佐倉さん、残業したいですか」
真木さんの冷たい声に、慌てて姿勢を正す佐倉さん。
「遠慮しまーす」

メールを開くと。

『帰りにお前んち行くから飯作って待ってろ』

……今日は金曜日。
明日はお休み。
うわぁ。


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