チェロ弾きの上司。

……沈黙。

不機嫌そうな真木さんに、強気を保てなくなったあたしは、おそるおそるきいてみる。

「……怒ってますか?」

「……怒ってるって言ったら?」

無表情と、低い声に、不安になる。

付き合うのなんて、数年ぶりだし、以前のだってままごとみたいな短期間の付き合いだったから、経験が圧倒的に少ないのよ。

どうしよう。
こんな時、どう仲直りしたらいいかなんて……。

「……ごめんなさい。あたし……。どうしたら、いいですか?」

途端。
真木さんの片方の口角が上がった。

しまった、きいたあたしが馬鹿だった、と後悔しても遅い。

「お前からキスしてくれたら許す」

……やられた。
ほんと性格悪い!

あたしからキスとか、
恥ずかしくてできるわけないでしょうが!
まだ付き合って一週間たってないんだよ⁉︎

「どうした? キスは初めてか?」

「別に、したことくらいありますが」
数回だけど。

「ふーん」

何。その面白くなさそうな顔。
初めてです、とでも言えば喜びましたか⁉︎

……いかん、あたしもつられて性格悪くなってどうする。
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