チェロ弾きの上司。

あらかたメンバーが席に座り、開始を待っていると、三神さんと、チェロを抱えた人が入ってきた。

うーむ、真木さんに似てる。

疲れてるのかな、自分。
上司のせいでストレスがたまって、ついには幻覚を見るまでになってしまったとは……!

目頭のツボを押していると、三神さんが話し始めた。

「みなさん、おはようございます。今日からチェロに新しい団員が加わります」

「真木といいます。よろしくお願いします」

何っ⁉︎

ま、ま、真木と言った。

目頭を押さえたまま、慌てて顔をあげる。

ぎゃー‼︎
真木さん‼︎
本人‼︎

そりゃあんな美しいお顔、そうそう転がってるわけはないんだった。

真木さんはチェロパートの後ろの方の席に歩いていく。

急いで下を向く。
気づかれていないはず。

マジか。
ありえない。
なんで。

チューニングが始まる。
今日はファーストヴァイオリンの後ろの方の席でよかった。
チェロの後ろの席は見えない。
(うちのパートは基本的に練習の席は自由)

気づかれてなるものか。
あたしの心のオアシスにまで鬼上司が入り込んでくるなんて、耐えられない。


それにしても、あたしの耳、おかしくなったかな。

さっきの演奏で、優しいとか思っちゃったけど、あの真木さんだよ⁉︎

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