チェロ弾きの上司。


いよいよ、定期演奏会本番の日!
今のところ無事、オケでは真木さんと顔をあわせずにやってこられてる。

ゲネプロを終え、開場を待つばかり。
練習室には、着替えを済ませたメンバーがぎっしり。それぞれ音出ししたり、さらったりしてる。
あたしが隅っこで壁に向かってストレッチしていると、アカリンが興奮した面持ちでやってきた。

「ねね、モッチー、見て見て。真木さんの礼服姿、ちょーかっこいいよ!」

アカリンは某大手紳士服チェーンに勤めてる。志望動機はスーツフェチだからだそうな。
彼女にとって本番の日は、男性の礼服をしこたま観察できる天国のような日なんだって。
まー確かに礼服着た男性は、いつもの何割増しかでかっこよく見えるけどね。

「真木さんの、あれきっとオーダーメイドだよ。生地も高級そう」

「いや、本番前にそんな情報いりませんから」

せっかく頭の中から真木さんの存在を締め出してたのに。

「三神さんはフルオーダーメイドって言ってたけど、真木さんもかな。やっぱりお金持ちのお坊ちゃんなんだよ、きっと」

「はいはい、そうでしょうね。会社に着てくる服もいいものですよ」

「ほら、2人で並んでるとこ見てよ! テンションあがるよー!」

「後で三神さんだけ見る」

「もったいなーい」



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