君に会う為に僕は眠る
 一通り御飯を食べ終わり、お腹を満たされた勇太を睡魔が襲った。御飯を食べた後というのはどうしてこうもダルく、眠くなるのだろう。副作用か何かか?睡眠薬でも入ってたのか?勇太は堪らず、その場でゴロンと横になる。すぐにでも夢の世界へと旅立ってしまいそうだ。
「頼むから、夢の中くらいはいい思いさせてくれよ」
そう呟つぶやくと、ゆっくりと瞼まぶたを閉じた。目の前が更に暗くなる。
―このまま永遠に眠らせてくれ
勇太の心が小さな、悲鳴にも似た、叫びをあげる。夢も希望も持てない現実世界にはもう嫌気が差していた。今の勇太には絶望と、自分に対する嫌悪感しかなかった。生きる気力などとうに枯渇していた。全てに対してどうでもよくなっていた。
そんな中で勇太が唯一心安らぐ時があった。それが、"眠る時"だった。眠り、夢を見ている時だけ心が安らいだ。現実世界を忘れることができたから。ネットゲームにしてもそうだ。勇太は別にネットゲームが好きでやっているわけではなかった。"現実世界を忘れることができるから"ただそれだけだった。
しかし、夢は永遠には続かない。どんな楽しい、面白い物語にも始まりと終わりがあるように、夢にも始まりと終わりがある。そして、その時間が楽しければ楽しいほど時間が短く感じられ、現実世界へと引き戻された時の絶望感も大きかった。この世に永遠など存在しないのだ。勇太も頭ではそれを理解していた。それでも、願わずにはいられなかった。もうどこか遠くに、違う世界に消えてしまいたかった。現実世界なんてもう、たくさんだ―。
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