不器用ハートにドクターのメス
「……っ、」
かゆくもないのに首裏をひっかき、神崎は息をついた。
……あいつといると、やっぱり調子が狂う。
首裏に当てていた手をぶらりと体の横に落とし、目元を歪める。
どうしてこんなに気になってしまうのか。今までにもいくつか答えを当てはめてみたものの、やはりまだ、どれもしっくりこないのだ。
避けられてる状態の今だって、あれから仕事の調子はどうか、また自分を責めていないか……と、福原のことばかりに思考が流れ、心配に似た気持ちを抱いてしまう。
軽く目頭を押さえ、仕切り直して喫煙所に向かおうとしたとき、神崎はふと、中庭に見知った人影を見つけた。
それは、一人の老婦人の姿だった。
真由美が仲良くしている入院患者。前に神崎も話しかけたことのある、例の女性だ。
その姿を見て、すぐにピンときた。先ほどここで出くわしたということは、さっきまで福原は、外にいたということだ。
ということは、きっと中庭にいたのだろう。
今日も自作の握り飯を食べながら、あの老婦人の話を、聞いていたのだろう。
……あいつはよく勘違いされるが、良さをわかってくれる人間も、いることにはいるのだ。
神崎は改めてそのことに気づき、そして同時に、複雑な思いに駆られた。
その、良さを理解する人間とやらが、老婦人だけではなく、次はもっと若いやつかもしれない、性別が違って男かもしれない。
そんな風に、考えたからだ。