不器用ハートにドクターのメス

その後すぐ、いや、自分が不愉快になる理由がないし、本当は優しい性格をしていると気づいてくれる人間が多い方が、あいつにとってはいいじゃないかと、神崎は考えを改める。

けれどどこかで、自分以外の人間に知られるのが悔しい――そんな思いが、消えずに残っているのも事実だった。


……ばかばかしい。


神崎は苦笑を浮かべ、すぐにそれを噛み殺す。

珍しいおもちゃを独占したい。自分はそんな、子どもじみた部分を持っている人間だったか。


なぜか、タバコを吸う気はなくなっていた。

喫煙所には向かわぬまま、神崎はきびすを返し、院内へと戻っていった。





< 141 / 260 >

この作品をシェア

pagetop