不器用ハートにドクターのメス
「仕事ができて、自分にも他人にも厳しくできて……でも、オペ以外の時は優しくて、わたしなんかにも気をかけてくれて、それにすごくかっこよくて……あっ、かっこいいから好きになったわけじゃ、ないんだけど……っ、」
まさか自分の妹が、ある男についてこんなにも一生懸命しゃべる日が来ようとは。
感慨深さと一種の切なさを覚えながら、廉次は、真由美の言葉を聞いていた。
話を聞いていると、本当にその男が好きなのだなということが伝わってくる。
真由美の好きな男が、神崎という名前であると知り、廉次は若干、見も知らぬ神崎に嫉妬を覚えつつ、口を開いた。
「つまり……その神崎さんと付き合えるようになるには、どうしたらいいかってことだよな」
廉次が言うと、真由美は目球が落ちそうなほど見開き、ぶるんぶるんと大きく首を振った。
「ち、ちがうよ!!」
「え?」
「だ、だって、わたしなんかが、好きになっていい人じゃないもの」
返ってきた真由美の回答に、廉次はあんぐりと口を開く。
そのぽかりと空いた丸い口内に入れ込むように、真由美はいそいそと、長く言葉を続けた。
「こんな気持ち……早く消さなきゃって、思ってるの。でも、会うとやっぱりすごく意識しちゃって……その、逃げるみたいに避けちゃって……どうしたら気持ちをなかったことにして、普通に話せるようになるのかなって……」
真由美の声は、少し泣きそうだった。