不器用ハートにドクターのメス
ほとんどが眠りにつき、息づく音が少ない時間。
暗い空の下、電気を灯されたこの空間は、陽が出ている間よりずっと、人工的なものに感じられる。
「福原さんの担当分はさっき確認したとおりね。後でチェックするから、とりあえず自分で作ってみて」
二人して物品庫に入ったとき、山下が素っ気なくそう言った。
真由美は「はい」と返事をして、ウン百とある器械の中から、必要と考えられるものを選び取っていく作業に入る。
沈黙の中、器具をトレーにのせる際の金属音だけが、カン、カン、と小さく響く。
たしかこれと、それからこれと……必要な器具を思い出しながら手を伸ばし、ふと山下に視線を移して、真由美は目を見張った。
山下の手は、驚くほどスムーズに、器械を選び取っていた。
とても速かった。何が必要だったか思い出すという工程を省いて、即座に体が動いているようだ。
……すごいなぁ。
その様子に、真由美は感激した。
以前から、回転が速くきびきびと動ける山下の仕事っぷりに、真由美は憧れを抱いていた。
こんな女性になれたらと、見学期間中は何度も思ったものだ。
有能な先輩が相棒だったおかげで、オペの器械準備は、かなりスムーズに終わった。
自分が準備したものに不足を指摘されることもなかったため、少しだけ肩の荷が下りた気分だ。
とは言っても、夜勤時間はまだまだ続く。いつ緊急患者が飛び込んでくるかわからないという緊張は、胃と心臓を痛くする。