不器用ハートにドクターのメス
やるべき事を終えたので、二人でとりあえず待機室に戻ったものの……空気は重く、静まりかえっていた。
山下も真由美も、どちらからも、会話を始めようとしない。
けれど真由美の方は、内心、話題を振った方がいいだろうかとかなり焦っていた。
焦るイコール、顔面はますます怖さを帯びることになるのだが、本人はそれに気づいていない。
山下と二人きりになる機会は、普段あまり訪れない。
山下は真由美を故意に避けているし、山下の周りには、いつも人がいるからだ。
けれど、いつだってテキパキと動ける山下に尋ねたい質問を、真由美はたくさん、胸の内に持っていた。
オペに入るとき緊張しない方法や、勉強の仕方。
オペ看になって、悩んだことはあるか。どんなことに、悩んだのか。
沈黙の中、どれか尋ねてみてもいいものだろうか……と、真由美は思い悩む。
しかし、尋ねるにしても、どれから聞けばいいのかわからない。
それに、急に質問なんて唐突すぎるかもと思うと、口を開くことすらできない。
どうしよう、でも……と真由美が心の中で繰り返しているうちに、その空気に耐えられなくなったのは、山下の方だった。
「……じゃ、わたし更衣室のソファで寝てるから。何かあったら呼びに来て」
温度のない声でそう言うと、真由美に視線を向けることもなく、待機室を出て行ってしまったのだ。
「あ……」
ソファなら、ここ、待機室にもある。
山下が本当に更衣室に行きたいわけではないことくらい、真由美にもわかった。