不器用ハートにドクターのメス

感情を隠すもともとの強面を遠くに押しやるほど、その表情には喜びがあふれていた。


「こんなの初めてです!すごく昔、家族で温泉旅行には行ったことがあるんですけど……」


真由美は嬉しい時には、いつもより早口になり、ほんの少し饒舌になるという特徴がある。

はしゃぐ真由美の様子に、神崎はふっと笑い、


「一緒に入るか」


つい、そんな軽口をたたいてしまった。


「……えっ」


とたん、真由美は顔を真っ赤に染め、ぴたりと固まってしまう。

その様子を間近に見て、神崎はすぐに、しまったと後悔した。純粋な福原には、スルーできない冗談だったか。


「……いや、冗談だ」


付け足しでそう言ってはみたものの、先ほどの盛り上がり具合はどこへやら。雰囲気の良いはずの和室に、気まずい空気がたちこめる。


「とりあえず……せっかく温泉旅行に来たわけだし、一階の大浴場に入ってこないか」


一度空気を一新しようと、そう提案した神崎に、真由美は顔を赤くしたまま、「はい」とか細い返事をした。




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