不器用ハートにドクターのメス
◇ ◇ ◇


一方、その頃。


「はああ……」


女湯に、同じく貸し切り状態で浸かっている真由美は、同じくため息をついていた。

体がしぼんでしまうのではないかというほどの、深い息だ。

湯の効能のところに筋疲労改善と掲げられているにもかかわらず、真由美の体はぎゅっと、小さく縮こまっている。


……失敗、してしまった。


眉間にまで力を入れながら、真由美は、先ほどの神崎とのやり取りを思い返していた。

一緒に入るか、なんて。本気で言っているわけじゃないことくらいわかっていた。

ただの冗談だったのだから、「もう、何言ってるんですか」と軽く返せばよかったのだ。

なのにあんな態度じゃ、意識しているのがバレバレだ。先生にも気を遣わせてしまった。

もう一度やり直したいと強く思うが、再度さっきの場面に戻ったとしても、うまく受け答えできる自信は全くない。

そういった冗談をうまくあしらう方法は、一生かかっても身につかなさそうだ。

……でも。

ちゃぷ、と顎先までを湯につけて、真由美は思う。

でも、わたしは、ちゃんと覚悟を決めてきたはずなんだ……と。

覚悟とはもちろん、この旅行で神崎との関係を、一歩進めようという覚悟だ。

予習や準備を怠らない真由美は、ちゃんと今日のために、勝負下着も新調してきたのである。

のぼせてしまう前に湯から上がり、バスタオルで体を拭くと、真由美はその新品の下着を初めて身につけた。

< 241 / 260 >

この作品をシェア

pagetop